パンサー向井の熱愛が、家族の虚栄心を暴露した夜
夜間21時30分。
リビングのソファで父が身を乗り出していた。
スマートフォンの画面を照らす光が、その顔を青白く染めている。
Yahoo!リアルタイム検索で「パンサー向井 熱愛」という急上昇ワードを見つけたのだ。
吾輩は高い棚の上から、その光景を観察していた。
「おい、聞け。
芸能界の恋愛事情は複雑だからな」父は言った。
「こういう話題は後々判明する伏線が多くてだな」テレビでゴシップニュースが流れ始めると、父は関連記事を検索し始めた。
豆知識を披露する直前の、いつもの動作である。
だが長女が即座に反応した。
「本当にやめて。
このニュース、もう3時間前からSNSで話題になってるんですけど」スマートフォンを掲げたリリの表情は、呆れと疲労で満ちていた。
父の後付け知識がいかに無駄であるかを、彼女は一瞬で見抜いてしまう。
母は杏仁豆腐のスプーンを口に運びながら、淡々と言った。
「そうなると思っていました」その声色に含まれた毒は、父の虚栄心を一撃で貫く。
母の予感は外れない。
父が知ったかぶりをするたびに、彼女はこの言葉を放つのだ。
長男が静かに呟いた。
「恋愛も一種の都市伝説の領域だ。
記録しておく」ノートに何かを書き込む仕草。
その姿を見て、吾輩は心の底で乾いた笑みを浮かべた。
「俺に任せろ。
芸能界の恋愛事情は複雑だから、後付けで語ると矛盾するんだ」父は言い張った。
だが彼の説明は直後、家族全員に指摘された。
リリの即座の反論、母の冷徹な指摘、クロウの無言の評価。
父の言い訳は、自らを苦しめるだけになった。
その時、吾輩はコーンビーフの匂いを催促する鳴き声を上げた。
テーブルの下から顔を出し、皿の方へ視線を送った。
母が薄く笑みを浮かべ、台所へ向かった。
父の矛盾した主張は、その空気感によって静かに無視された。
人間とは不思議な生き物だ。
虚栄心と知識欲に駆られ、家族にも見抜かれているのに、同じ過ちを繰り返す。
その様を高い場所から眺めていると、吾輩の支配する家族とは、一体どれほどの混沌を抱えているのか。
そう感じずにはいられなかった。

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