深夜ラジオと家族の矛盾——情報の速度より正当性を守る人間たち

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ラジオの周波数は情報の速度ではない——深夜23時の家族会議

夜23時過ぎ、私はリビングのソファでラジオをつけた。

静寂が好きな私にとって、深夜の番組は丁度よい背景音になる。

ラジオから流れてくる声は、テレビのように家族の気を散らさない。

だからこそ、この時間帯は観察に最適である。

「13西川貴教のオールナイトニッポンって知ってるか」

夫のゴウが突然、スマートフォンを掲げながら声を上げた。

Yahoo!リアルタイム検索で急上昇話題を見つけたのだろう。

彼はいつもそのタイミングで豆知識を披露する準備をする。

「その番組、深夜の周波数は記録に値する」

息子のクロウが記録ノートを手に現れた。

彼の厨二病は相変わらず健在で、深夜ラジオを「情報収集の秘密ルート」として分析している。

「お父さん、それ4時間前から話題になってますけど」

娘のリリがスマートフォンを確認しながら指摘した。

彼女のSNS感覚は家族で最も正確だ。

「俺が先に知ってた。

スマホで事前にチェックしてたんだ」

ゴウは即座に言い張った。

彼の言い訳の層構造は、もはや観察の対象というより、家族内の儀式に近い。

「そうなると思っていました。

いつもそうですね」

私は淡々と返した。

この言葉は、もはや指摘ではなく、観測の報告に過ぎない。

「俺に任せろ、大丈夫だから。

深夜ラジオの話題は俺が最新だ」

ゴウが自信満々に言い張った時点で、勝敗は決していた。

「いや、Xで3時間前に盛り上がってましたけど」

リリが冷徹に矛盾を指摘する。

「ラジオの方が情報は新しい。

スマホは遅れてる」

ゴウの逆ギレは、論理的な破綻を隠す最後の手段だった。

リビングは沈黙に包まれた。

誰もが、その説得力のなさを認識している。

モザイクがコーンビーフの缶詰を前に、器用に身体を擦り寄せてきた。

私は黙ってそれを与えた。

ペットだけが、この家族の矛盾を超越している。

深夜2時。

私の観察日記に、また一つの記録が加わった。

人間とは、情報の速度よりも、自分の正当性を守ることに必死な生き物らしい。

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