5RIZANの衝動が、家族の沈黙を支配した夜
夜20時30分、リビングのソファに吾輩は身を丸めていた。
リリがスマートフォンを掲げた。
「父さん、これ買ったらどう?」という声が響く。
画面には「5RIZAM」という急上昇話題が映っていた。
父は即座に身を乗り出し、通販サイトのページを開いた。
「俺に任せろ、この手の新商品は俺が詳しい」と宣言する瞬間、吾輩は父の脳内で何かが点火したのを感じた。
父は豆知識を次々と並べ始めた。
「節約の観点から見ると今が買い時だ。
初期ロットは値段が高いと相場は決まってるがな、このタイミングならまだ値引き幅がある」という声が続く。
母が淡々と呟いた。
「そうなると思っていました」
その言葉の重さは、父には届かないらしい。
クロウは黙ったまま検索を始めた。
スマートフォンの光が彼の顔を照らしている。
「この商品について記録しておく必要がある」と短く呟く。
父は「大丈夫だから」と言い切り、カートにサイズを選んで追加した。
指が画面を叩く音が聞こえる。
リリが不安げに言った。
「父さんって本当にすぐ買うね」
父は反論した。
「言い訳じゃなく戦略的判断だ。
むしろ躊躇する奴が損をするんだ」
翌日配送予定のメールが到着すると、母は冷ややかに声を上げた。
「また無駄遣いですか」
父は即座に言い訳を用意した。
「実は別の用途に使える。
こういう多目的製品は、実は家計管理に役立つんだ。
さらに言うなら、ストレス軽減効果も期待できる」と三つ用意した言い訳を矢継ぎ早に放つ。
吾輩は高い棚の上から、この営みを観察していた。
人間とは不思議な生き物だ。
購買行動と言い訳の速度は、正比例するらしい。
コーンビーフの空き缶を父の足元に蹴った。
父は気づかない。

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