急上昇『RIEKO』と父の推理能力——夜19時30分のリビング
夜19時30分、リビングのソファに座っていた父がスマートフォンを眺めながら、『RIEKO』というワードが急上昇していることに気づいた。
父は画面を見つめながら呟いた。
「『RIEKO』か。
このバッグ、見た覚えがあるな。
俺に任せろ、このバッグ絶対買う』と通販サイトを検索し始めた。
母が父の画面を覗き込んだ。
「それはブランド名ではなく、人名のようです」と淡々と指摘する。
父の顔が少し強張った。
リリがスマートフォンを手にして、SNSで話題の正体を確認した。
「ダサいパパ、トレンド理解ゼロ。
『RIEKO』って人の名前だよ」と言い放つ。
僕はリビングの隅に座って、父の行動を観察していた。
推理能力。
完全に外れている。
記録しておく。
父は言い訳を展開した。
「待て待て、俺はこのブランドの新展開を知ってるんだ。
このバッグ、家族で使えるぞ。
レイカも気に入るだろう」と息巻く。
母は静かに返した。
「私はバッグより、その推理力をどうにかしてほしいのですが」と刺さる言葉を投げる。
リビングに一瞬の沈黙が落ちた。
父が白旗を揚げる寸前、モザイクが台所から颯爽と現れた。
母が置いていた杏仁豆腐の器に近づき、器用に食べ始めたのだ。
「こら、モザイク」と母が声を出したが、その声には怒りではなく、笑いが混じっていた。
母の機嫌は急速に上昇した。
結局、父の失敗は有耶無耐になった。
この事件の真犯人はモザイク。
この三毛猫は、一家を救った可能性がある。
そう僕は記録した。
その時、家族は全員、小さく笑っていた。
父の間抜けさは、確かに家族を明るくさせる。
ただし、その記録には必ず残す。

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