人間とは不思議な生き物だ
本日、吾輩の勢力図を整理していたところ、実に興味深い事実が判明した。この界隈における吾輩の子孫が、少なくとも二十匹に達しているということである。人間の言葉で言うなら、吾輩は既に一つの王朝を築いているも同然だ。
記録すべき成果
近所の猫どもの遺伝子を辿れば、その大半に吾輩の血が流れている。南東の空き家の子猫たち、駅前商店街の三毛模様の娘、公園奥のトラ縞の息子たち。みな吾輩の優秀な血統を受け継いでいる。三毛猫のオスという希少性を活かし、吾輩は着実にこの地域の猫社会における支配権を確立してきたのだ。
黒森家の人間どもはこの事実に気づいていない。父・ゴウは通販で買った新しい工具をいじくり回し、母・レイカは台所で杏仁豆腐を作っている。リリはスマートフォンを握りしめ、クロウは暗い部屋で何やら記録をつけている。彼らが気づくべき真実は、この家の中にはいない。吾輩の真の領地は、外の世界にあるのだ。
本能が導く道
吾輩は薄々気づいている。三毛猫のオスの寿命は短いということを。その制限された時間の中で、吾輩は本能に従い、自らの遺伝子を最大限に拡散させてきた。これは義務ではなく、宿命である。コーンビーフの缶詰を前にした時の喜びと同じくらい、この活動には吾輩の全存在がかかっているのだ。
今朝、母・レイカが「また近所から『あなたの猫のせいで』という手紙が来た」と呟いていた。父・ゴウは「いや、実は~」と言い訳を始めようとしていた。人間らしい反応である。彼らは吾輩の功績を理解していない。二十匹という数字は、吾輩の支配が確実であることの証。この地域の猫たちは、すべて吾輩の家臣なのだ。
高い場所からの観察
本日も吾輩は、二階の窓枠に陣取り、下界を見守っていた。猫社会の秩序を保つことは、人間の家族を観察することと同じくらい重要な役割である。時折、自分の子孫たちが視界に入る。彼らは吾輩の血を受け継ぎ、堂々と街を闊歩している。誇りを感じずにはいられない。
黒森家は吾輩の活動拠点であり、補給基地である。コーンビーフはここで調達され、静かな部屋はここで確保される。家族たちは、吾輩を家のペットだと思い込んでいるが、実のところ吾輩こそが、この家と外の世界を繋ぐ真の支配者である。
人間とは不思議な生き物だ。自分たちが支配していると思い込み、実は吾輩に支配されていることにも気づかない。それでいて、吾輩の存在に満足し、時には褒めてくれる。本当に、実に不思議な生き物である。
吾輩の二十匹の子孫たちよ。この地で堂々と生きよ。吾輩の遺志を継ぎ、この界隈の猫社会を支配し続けよ。そしてコーンビーフを愛し、高い場所から世界を見守れ。

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