7月25日 黒森ゴウの日記
今日はな、俺に任せろと言った手前、ちょっと気まずい事態になってしまったんだ。
事の発端は昨日の夜。
リリが友達とSNSで盛り上がってた写真撮影企画の話を聞いてな、俺は天才的な提案をしたわけだ。
「そういうのなら、家の物置の壁をペイントして撮影スタジオにしちゃおうぜ」ってやつだ。
俺のイメージとしては、落ち着いた灰色か濃紺に塗り替えて、照明を取り付けて、プロっぽい背景にするというもの。
家族の節約と娘の夢が両立する、まさに完璧な案だと思ってたんだよ。
ところがだ。
今朝、レイカが「物置を撮影スタジオにするというのは、つまり物置を使えなくなすということですね」と、あの冷たい声で言ってきた。
え?
俺は「いや、壁を塗るだけだから大丈夫だから」と説明しようとしたんだが、クロウが「記録として確認したいのですが、父さんは物置の中身をどこに移動させるご計画ですか」と静かに質問してきた。
あ、あの掃除機とか、工具類とか、通販で買った開けてない箱とかか……。
そこに来てリリが「本当にやめて。
物置を撮影スタジオにするとか、近所の人に何て説明するの?」と。
いや待て待て。
俺の提案は物置の壁を活用するというものであって、物置そのものを改造するという話ではなかったはずだ。
でもな、説明してみると余計に混乱する。
「壁だけ」という概念が家族には伝わっていない。
俺は、いや、これはだな、大事なのは効率なんだ、と言い訳を組み立てようとしたが、レイカに「そうなると思っていました」と言われた時点で、もう敗北は確定していた。
どうすんだこれ。
夕食時に家族会議になるのは目に見えている。
そこで俺が沈黙しようものなら、「父さんは自分の提案に責任を持たない」という記録がクロウの脳内に刻まれる。
だからな、俺は決断した。
杏仁豆腐を用意する。
スーパーで買ってきた缶詰めじゃなく、真面目に作った奴をだ。
ネットで「杏仁豆腐 本格レシピ」と検索して、手順を全部プリントアウトした。
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俺に任せろ。
この作戦なら大丈夫だから。
レイカの機嫌が良くなれば、家族会議も円滑に進む。
そして「実は物置の改造案は見送ることにしました」と、俺が自分から提案を取り下げれば、「父さんも時には良い判断ができるんだ」という評価に変わる。
完璧な作戦だ。
あ、でもモザイクに杏仁豆腐は与えちゃダメだな。
あの猫、勝手に食べようとするし。

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