探し物が見つからないという地獄。 それは俺の完璧な計画の落とし穴だった
7月27日、朝10時。
俺は居間で段ボール箱を前にして立ち尽くしていた。
昨日のベランダ修繕作業で使った防水塗料の説明書が見当たらないのだ。
あの塗料は通販で3,980円。
決して安くない。
もう一度塗り直しが必要になったかもしれない。
俺に任せろと言ったはずなのに、この状況はいったい何だ。
消えた説明書の謎
昨日、母さんが大掃除で発掘した段ボール箱がいくつも積み重なっていた。
俺が「いつか使うかもしれない」と保管しておいたやつらである。
確実にあの中のどれかに紛れ込んでいるはずだ。
説明書は塗料の箱と一緒に保管したはずだからな。
俺は箱を一つ手に取り、開けてみた。
古いゲーム機、使わないコード、取説の束。
違う。
次の箱を開ける。
衣類、不要な書類、懐かしい家電。
まだだ。
「父さん、何してんの?」
リリが居間に現れた。
スマートフォンを片手に、怪しげな表情で俺を見ている。
「見ての通り、大事な説明書を探してるんだ。
防水塗料のやつだ。
俺に任せろ。
」
もちろん、まだ見つかっていない。
だが、口ではそう言うしかない。
家族の目が痛い
「あ、それなら母さんが整理する時に
一緒に片付けちゃったと思う。
」
その一言で、俺の背筋が凍った。
「え、ちょっと待て。
母さんに確認して……」
俺はリリの後を追い、台所に向かった。
母さんは野菜を切っていた。
その手は止まらない。
「あ、そういえばあの説明書ですが。
昨日、段ボール箱の中から古い紙が出てきたので、
燃えるゴミに出してしまいました。
そうなると思っていました。
」
母さんはそう言った。
淡々と、何の躊躇もなく。
俺の心臓は一瞬停止した。
「ちょっと待ってくれ。
あれはただの説明書じゃなくて……」
そう言いかけて、俺は口を閉じた。
説明書が大事だという証拠は、俺の中にしかない。
防水塗料の施工方法なんて、ネットで調べればいい。
実際、そういう情報は山ほどある。
それなのに、俺は焦っていた。
失敗を認めたくないという気持ちが、
俺を動かしていたんだろう。
部屋に戻った俺は、スマートフォンで検索を始めた。
あの塗料の施工動画は、ちゃんと存在していた。
それでいいはずなのに、心のどこかで引っかかったままだ。
昨日、完璧だと思った計画が、
こうも簡単に崩れ去るものなのか。
クロウがそっと居間を通り過ぎていった。
何か記録しているのだろう。
この家での失敗は、みんなに記録されているんだろうな。

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