7月27日 居間で失った『記録』について
昨日、僕は重要な観察ノートを失った。
あのノートには、モザイクの行動パターンと町内の猫たちの関係性について、2週間かけて記録したデータが詰まっていた。
特に注目していたのは、モザイクが隣町から帰宅する時間帯と、その直後に起きる近所の異変についてだ。
都市伝説ではなく、実際に起きている現象として記録を残していたのに。
朝、居間の机の上に確実にあった。
親父が新しく買った通販の工具箱の箱が積み重なっていた場所だ。
僕は昨日の午後、その周辺で観察記録をまとめていた記憶がある。
「クロウ、見てないか」と母が聞いてきた。
夏の大掃除の続きで、居間の整理をしているらしい。
「どんなノート」と僕が返すと、母は少し考えて答えた。
「あなたの、黒い表紙のやつ。
机の上にあったはずだが」と。
その瞬間、僕は気づいた。
親父が昨日、段ボール箱を片付けた時、巻き込まれた可能性が高いということに。
実際、通販の空き箱が何個も積み重なったままで、一部は既にゴミ出しの準備をされていた。
父親の部屋へ走った。
親父は自分の工具整理に夢中だった。
「記録を見たか」と聞くと、親父は自信満々で答えた。
「俺に任せろ。
整理の時に見たような気がするが、多分どっかに置いてあるはずだ」と。
その曖昧な返答。
その後、親父は言い訳を始めた。
「片付けの途中だから、今は混乱の最中なんだよ」と。
もしあのノートがゴミに混ざっていたら。
2週間分の観察記録が、一瞬で消える。
データが失われるということは、僕にとって致命的だ。
今、僕は段ボール箱の山を前にして、どこから探し始めるべきか途方に暮れている。
記録は、取り戻せるものなのか。

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