辞表提出の広告が暴く、父の衝動買い癖の正体
夜20時30分。
リビングのソファで父がスマートフォンを握りながら、突然声を張った。
「俺に任せろ、これはすごい。
退職代行サービスだと」
画面には「辞表提出を業者に任せるのが最新の仕事術」という広告記事が映っていた。
父は自信満々でその内容を家族に音読し始めた。
僕はテーブルの上で、手帳に走り書きを開始した。
母はソファの横で杏仁豆腐を食べていた。
スプーンを止めることなく、静かに口を開いた。
「そうなると思っていました」
リリが携帯から顔を上げた。
「その前に会社に出勤してください」と即座にツッコミを入れた。
父の言葉に対する家族の反応は、いつもと同じだった。
モザイクはマッサージチェアの上で丸くなっていた。
父が先月衝動買いした高級品である。
その上から父の言葉を観察する姿勢は、吾輩なりの距離感の取り方らしい。
「いや、これはな、将来のための投資情報だ」と父が言い訳を始めた。
その顔には、本気で相談したい雰囲気が漂っていたが、僕たちは既に知っていた。
「また通販の話だ」が正体だという事実を。
父は記事を削除した。
翌朝には「昨日のはジョークだ、大丈夫だから」と宣言するだろう。
母は家計簿にマッサージチェアを「無駄な出費」と記入した。
僕は手帳に書き込んだ。
「インプットした。
父の矛盾発言パターン第47号」
重大な言葉と見せかけて、翌日には忘れ去られる。
それが父という記録対象の本質であることを、僕はまた一つ確認した。

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