7月27日、モザイクが帰ってこない——観察記録の途中で起きた異変
午後2時47分。
僕は自分の部屋で、新しい観察ノートにモザイクの行動パターンを記録していた。
昨日失った2週間分のデータを補完するため、今朝から改めてインプットを開始していたのだ。
モザイクが外出する時間帯、帰宅する時間帯、その時の近所の猫たちの反応——すべてが一つの法則で結ばれているはずだった。
窓から外を見ると、いつもの路地が見える。
夏の日差しが容赦なく降り注いでいた。
モザイクは今日も午後1時には出かけていた。
いつもなら3時間以内に帰宅するはずだ。
3時15分。
あの気配がしない。
通常のパターンから18分の遅延が発生している。
僕は記録ノートに鉛筆を走らせていた時、玄関から父の声が響いた。
「モザイク!モザイク、どこだ!」
異常検出。
父は居間から出た。
母も廊下に出てきた。
リリも階段を降りてくる音が聞こえた。
「お母さん、モザイク見ませんでした?」と父が聞く。
母は冷静に答える。
「そうなると思っていました」
その言葉の重みに、僕は一瞬、手を止めた。
母がそう言うということは、このことを予測していたということか。
何か知っているのか。
僕は記録を続ける。
これは単なるペットの失踪ではない。
もしかして、モザイクが隣町の猫たちのボスと接触した時に起きる、あの奇妙な現象に関連しているのか。
2週間前に記録した『三匹の猫が同じ方向を向く現象』が、再び起きているのではないか。
母はすでに玄関の鍵を確認していた。
父は懐中電灯を手に取っている。
リリは携帯でSNSに何か打ち込んでいた。
それぞれが自分たちのやり方で、何かを察知しているようだった。
午後3時32分。
窓の外に、あの路地で見た『三匹の猫』が再び現れた。
同じ方向を向いて、じっと動かない。
その視線の先には、何かがある。
僕の記録ノートはまだ完成していない。
だが、確実に何かが動き出している。
モザイクは今、どこで何をしているのか。
そして、母がなぜ『そうなると思っていた』と言ったのか。
その答えは、もう記録の範囲外にあるような気がしてならなかった。

コメント