7月25日の記録
吾輩は本日、いつもの日向ぼっこコースで妙なことを目撃した。
午後2時半頃、隣家の庭へ侵入した際のことである。
人間とは不思議な生き物だ。
その家の主人——齢60を超えるはずの老人だが——が、わざわざ脚立を持ち出し、自宅の雨樋に何やら取り付けようと躍起になっていたのだ。
脚立の不安定さときたら、見ているだけで危険である。
吾輩は軒下の日の当たる場所から、その様子を静かに観察することにした。
人間は自分の能力を過信する生き物らしい。
案の定、数分後のことだ。
老人の手から何かが落ちた。
金属製の小さな部品が、地面へ着地した直後、吾輩は反射的に動いた。
その部品を前足で押さえ込み、転がらないようにしたのである。
何か役に立つこともあるかもしれないと、本能的に判断した次第である。
老人は吾輩に気づくと、顔を緩ませた。
「あ、また来たか。
ありがとうな」と、つぶやいた。
人間の感謝の言葉は、吾輩の耳に快い音である。
老人はポケットからコーンビーフの缶を取り出した。
おそらく吾輩の来訪を想定して、常備していたのであろう。
人間にしては、なかなか頭が働くではないか。
吾輩はその缶を前に、日々の来訪が正当な行動だったことを確認した。
帰宅後の一幕
黒森家に戻った後、リリが吾輩を見て呆れた表情を浮かべていた。
「また誰かの家から何か貰ってきた顔だ。
本当にやめて」と、つぶやいていたが、吾輩の行動は記録に値する。
ゴウは不在で、レイカは杏仁豆腐を食べながら黙々と何かを整理していた。
クロウは自室に籠もっていたが、夜間に吾輩の活動記録について話しかけてくるだろう。
本日の外出は、吾輩にとって有意義な時間となった。
人間社会の営みを観察することで、吾輩の統治は一層強固になるのである。

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