バカ面白い投稿が招いた段ボール箱の混乱
夜20時30分、リビングでリリがスマートフォンを掲げていた。
Yahoo!リアルタイム検索の急上昇欄に「バカ面白い返信数6リポスト数780いいね数17,206」という投稿が映っていたのだ。
私は料理雑誌をめくりながら観察していた。
リリの声に反応したのは夫だった。
「パパ、これマジで面白いんですけど。
でも絶対に変になってるのは気をつけて」リリが呟いた。
その瞬間、夫は身を乗り出した。
「大丈夫だから、俺に任せろ。
こういうのは俺が作れる」と自信満々に宣言したのだ。
予測通りの展開である。
私は口元に薄い笑みが浮かぶのを抑えられなかった。
夫はスマートフォンを片手に、すぐさま通販サイトを開いた。
リリの部屋から段ボール箱を持ち出す音が聞こえた。
許可を得ぬままの強行である。
「そうなると思っていました」と私は呟いた。
クロウはノートを広げ、この一連の行動を記録し始めた。
「この事象を記録しておく必要がある。
父の衝動的判断が家族内で引き起こす波動パターン」と呟いている。
オカルト的な分析は相変わらずだ。
リビングが騒々しくなったのはその時だった。
モザイクが開かれた段ボール箱に侵入してしまったのである。
夫の準備した空間は、三毛猫の体重によって瞬く間に混乱の舞台と化した。
結果として撮影されたのは、本人が意図した「バカ面白い動画」ではなく、「猫が支配する家族の日常」という予期せぬシュール作品だった。
モザイクは段ボール箱の淵から私たちを見下ろし、その鳴き声は聞こえない心の声で呟いていたはずだ。
「人間とは不思議な生き物だ」と。
世間に発表されることはない。
この家族内だけの秘蔵ネタは、後々まで言及されることになるだろう。
私は杏仁豆腐を食べながら、この無計画な家族を観察し続けた。

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