洗剤だけのはずが——父の特売戦略と母の冷徹な質問
午後2時15分、吾輩は父が玄関で靴を脱ぐのを観察していた。
父は「洗剤を買うだけだから、すぐに戻る」と母に宣言していたのだ。
だが父は戻ってこなかった。
30分後、父は両手に抱えた荷物を持って帰宅した。
吾輩の瞳は一瞬で父のかごの中身を捉えた。
洗剤は確かにあるが、その周りは特売品で埋め尽くされていた。
乾電池、液体洗濯洗剤、ボディーソープ、詰め替え用シャンプー、輪ゴム、キッチンペーパー。
人間とは不思議な生き物だ。
リビングでテーブルの上に並べられたそれら商品を前に、父は胸を張った。
「特売だったんだ。
全部まとめて買うと効率的だろ。
俺に任せろ、これ以上の節約方法はない」と主張する。
その時、母が台所から出てきた。
母はテーブルに身を乗り出し、ひとつひとつ商品を指で示していった。
「ボディーソープは先週買ったばかりですね。
シャンプーもあります。
乾電池も家に何箱かあります。
輪ゴムに至っては、引き出しに百個単位であります」と淡々と述べた。
父は言い訳を試みた。
「いや、こういうのは常備しておくもんだろ。
備蓄ってやつだ」と応じたが、母は首を傾げた。
「そうなると思っていました。
ですが、買い置きと衝動買いは別物です。
洗剤のためだけに出かけて、その八割が不要品では、効率も節約もありません」。
吾輩は高い棚の上から、この光景を眺めていた。
父の胸の高さは徐々に下がっていく。
母の言葉は刺さるが、彼女の論理に反論の余地はない。
吾輩にとって、この家の真の支配者は誰かが改めて明確になった瞬間である。

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