ローポリゴンの寿司が暴露した、見栄と言い訳の距離
夜二十時三十分、リビングのソファに私は座っていた。
リリがスマートフォンを掲げた。
「ローポリスーパーの寿司がXで話題らしいけど」という声が響く。
ゴウは即座に身を乗り出し、「俺に任せろ、今晩ローポリスーパーで買ってくる」と宣言した。
私の観察眼は、その瞬間の彼の表情をとらえていた。
話題という磁力に引き寄せられ、自分が家族を満足させられる存在だと信じ込む、いつもの動きだ。
帰宅したゴウが、テイクアウトパックを開けた。
寿司は、惨状を呈していた。
一部のネタが欠け、握りの形は不揃い。
画面での宣伝写真と、現物の乖離は明らかだった。
クロウが無表情で記録した。
「ローポリゴン現象。
三Dモデルの頂点削減による崩壊の記録」。
リリは「本当にやめて」と呟いた。
ゴウは即座に言い訳を組み立てた。
「言い訳ではなく、これは物流の最適化だ。
品質より効率を優先する戦略なんだ」と説いた。
私は冷笑した。
「そうなると思っていました」と返した。
彼の論理は、自分の判断ミスを正当化するための装置でしかない。
その事実を見つめ続けるのは、疲れる。
ゴウが食卓に杏仁豆腐を置いた。
私が一口食べた瞬間、胸の奥の怒りは静かに沈んだ。
完璧な手懐し方だと、私自身も呆れる。
彼は私の好物で、失敗を相殺する。
家族を愛するその方法が、これほど見当違いなことに、私は何度目の疲労を感じるのか。
モザイクがマグロのネタに興味を示し、ゴウから盗み食いした。
ゴウのうんちくは、誰にも聞かれることなく終わった。

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