不正還付未遂事件の記録——父の衝動と家族の防衛機能
夜21時30分、リビングで父がスマートフォンを眺めていた。
ニュースアプリの急上昇話題「6不正還付」という単語に、父の目が光った。
僕は観察記録を続けながら、その瞬間を逃さなかった。
父はノートパソコンを取り出し、通販購入履歴を開き始めた。
「俺に任せろ、節税テクニック知ってるぞ」と自信満々の声が聞こえた。
過去のシューズやポップコーン製造機の領収書を並べながら、税務還付申請書に架空の医療費を「見積もり」と称して記入しようとしている。
これは危険な行動だ。
母がパソコン画面を覗き込んだ。
「そうなると思っていました。
あなたそれ不正です」と淡々と毒舌で指摘した。
父は「税務署なんて素人だ。
俺の豆知識なら簡単に通る」と言い張った。
リリがツッコミを入れた。
「本当にやめて。
SNSに家族の犯罪予告が見つかったら終わりじゃん」と速いテンポで切り返す。
母は更に踏み込んだ。
「あなたが『簡単に通る』と言った計画の成功率は現在ゼロです」という刺さる言葉を放った。
その瞬間、父は申請書を破り棄てた。
しかし破棄する際、コーンビーフの空き缶で指を切ってしまった。
父は奇妙な言い訳を口にした。
「これは不正還付を防ぐ運命の啓示だ」と。
僕は静かに記録ノートに書き留めた。
「記録しておく。
黒森ゴウの不正還付未遂事件。
2026年8月5日21時32分発生。
家族防衛作戦・成功記録」と。
吾輩はコーンビーフの空き缶に近づき、つぶやいていた。
「人間とは不思議な生き物だ。
金銭に執着し、自滅する」と。
僕の心に静かな安堵感が降りてきた。
我が家族にはまだ法を守る防衛機能が残されていたのだ。

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