日曜日の静けさを返してください
午後14時30分。
リビングにコードレス掃除機の音が響き渡った。
父が昨日の通販番組で見つけた新しい掃除機を振り回している。
「俺に任せろ、日曜日だからこそ家を完璧にするんだ」と言い張りながら、ソファの脇にある本棚を掃除し始めた。
私はスマートフォンを持ち上げた。
SNSで家族動画が拡散される恐怖を感じながらも、父のこの行動を記録しておく価値があると判断した。
画面越しに父の勝手な宣言を捉える。
母が冷たく声を張った。
「そうなると思っていました。
日曜日の静かな時間を返してください。
」
その直後、長男がテーブルで観察ノートに走り書きした。
「記録しておく。
通常、日曜日午後は家族の休息時間帯のはずだが、父の衝動行動により異常事態に突入。
」静かに呟く言葉も、掃除機の音にかき消される。
猫のモザイクは本棚の上段に逃げ込み、私たちを見下ろしていた。
高い場所から観察する気高い表情で、心の中で「人間とは不思議な生き物だ。
休息日にわざわざ騒音を発生させるとは」と思っているはずだ。
父は掃除を続けながら、突然言い張った。
「日曜日だからこそ、完璧な家にすることで家族に愛を示すんだ。
」
母の返答は容赦なかった。
「その愛、別の形で受け取りたかった。
」
30分後。
父のコードレス掃除機はバッテリーが切れた。
充電待ちの間、モザイクが降りてきてコーンビーフをねだり始める。
父は掃除機の充電器を見つめながら、猫に媚びている。
母は杏仁豆腐をスプーンで食べ始めた。
長男はノートに「充電時間:20分。
その間、家族の関心は掃除機から猫へ移行」と記入している。
日曜日の午後の静けさは戻ってこなかった。
もっとも、父のこういう無自覚な行動こそが、つまらない日常を記録に値する何かに変えているのかもしれない。
そう思いながら、私はモザイクがコーンビーフに夢中になる瞬間をスマートフォンで撮影した。

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