7月27日、午後1時。
俺は防水塗料の説明書を探し続けていた。
朝から段ボール箱を何度も漁ったが見つからない。
頭に浮かんだのは一つの結論だった。
「レイカ、また勝手に捨てただろ」
俺は台所のレイカに詰め寄った。
「そうなると思っていました」
とレイカは表情も変えずに答えた。
「私は何も捨てていません」
その言い方が余計に俺の確信を強めた。
絶対にこいつが片付けたに違いない。
俺はそう思い込んで工具箱を蹴飛ばした。
ガチャンと大きな音が響いた。
中を覗くと見覚えのある紙が挟まっていた。
それは探していた説明書そのものだった。
昨日の作業後、自分でしまい込んでいたらしい。
顔から一気に血の気が引いた。
「あ、いや、これは……」
言い訳の言葉が出てこなかった。
レイカは黙って洗い物を続けている。
その背中が何より雄弁だった。
俺は誰にも見られていない隙に箱を戻した。
大丈夫だから、と小さく呟いた。
誰に向けた言葉なのか自分でも分からなかった。
窓の外でモザイクが日向ぼっこをしていた。
その姿が妙に呑気に見えた。


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