橋下徹の論破テクニックで家族の本音を映す夜
夜21時30分、リビングのテレビからニュース番組が流れていた。
画面には橋下徹の政治評論が映っていて、俺は通販カタログを膝に置いたまま、身を乗り出した。
あの男の喋り方、俺は詳しいんだぞ、という自信が俺の中で膨らんでいた。
「見ろ、あの論破のテクニック。
俺はあの男の手法、全部わかってるんだ」と俺は声を張った。
「俺に任せろ、大丈夫だから」と付け加えると、リビングの空気が微かに変わった。
クロウが暗い部屋の隅から身を起こす。
奴は記録ノートを手に、ペンを走らせ始めた。
「記録しておく……この発言は矛盾している」と短く呟いている。
14歳のあいつが何をメモしてるのか、俺には見当がつかない。
レイカが台所から戻ってくると、奴は俺を真っすぐ見つめた。
「論破というのは相手を言い負かしたいだけの幼稚な行為ですね。
それを戦略と呼ぶのは自己欺瞞です」と淡々と毒舌を放つ。
奴が怒ってるわけじゃなく、事実を言い切る時のあの顔だ。
俺は通販カタログを少し乱暴に置いて、反論した。
「違う違う。
俺が言いたいのは戦略の話で、論破してやろうとか、そんなことじゃない」と声を大きくした。
だけどレイカの視線は動かない。
リリがスマートフォンを持ったまま、ソファから顔を上げた。
「父さんもこういう喋り方する。
本当にやめて」と呟くと、奴は指の先でスマートフォンの画面をタップし始めた。
この会話をメモしてる。
あいつはいつもそうだ。
俺は言い訳を重ねようとしたが、テレビの声だけが響く。
通販カタログは膝から落ちて、床に散らばった。
モザイクが本棚の上から冷たい視線を落としている。
奴は吾輩らしく、心の中で何か呟いてるんだろう。
自分が言いたかったことは、家族には伝わってない。
それなのに俺は、昨日も今日も同じ言い訳をしている気がした。
橋下徹のテクニックを理解してるはずの俺が、家族には何ひとつ伝えられていない。
その矛盾に、俺は気づいてるのに、認めたくない。

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