値下げしない家電が暴露した、見栄と現実の距離感
夜19時30分、リビングのソファにゴウが腰を落ち着けた。
スマートフォンの画面を眺めながら、彼は得意げな声を張り上げた。
「な、見ろよ。
この43インチテレビ、3年前から価格据え置きなんだぜ。
値下げしない家電が話題らしいんだ」。
うんちくを垂れる前置きが見えた。
私は台所から戻り、ダイニングテーブルに着いた。
彼が続けた。
「つまりな、価値がある商品だから値段が下がらねえんだ。
俺の先見の明で3年前に安く買えたってわけだ」。
自信満々の声である。
私は淡々と返した。
「つまり、あなたが3年前に買ったテレビと、今日売られているテレビが同じ値段のままということですね」。
ゴウは身を起こした。
「だから品質がいいからだ。
俺の目利きは間違ってない」。
言い張る姿勢が見える。
その時、リリがスマートフォンを掲げた。
「親世代って値下げしない商品を逆に高く評価する謎の習性があるんだけど」。
SNS投稿を開始している。
私は内心で苦笑した。
クロウが小さく呟いた。
「父は人気商品の波動に引き寄せられた可能性が高い。
記録しておく」。
彼は観察モードに入っていた。
ゴウが再び声を張った。
「値段は変わるもんだ。
家電なんて全部そうだろ」。
価格話題全体を否定し始めている。
モザイクがキッチンから現れた。
コーンビーフをねだる鳴き声を発する。
私は家族の言い訳の連鎖を観察していた。
失敗を品質判定に置き換える。
それが彼のパターンである。
杏仁豆腐でも作ろうか。
その方が家族の無意識な欲望には効果的だ。
リリはSNS投稿の伸びを確認し始めた。

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