ゲームボーイカラーの黄色い亡霊——父の投資心理を記録する
夜19時30分、リビングに父が倉庫から引っ張り出した黄色いゲームボーイカラーを持ち込んできた。
父はスマートフォンの画面を家族に見せびらかす。
「Yahoo!リアルタイム検索でゲームボーイカラーが急上昇している。
中古相場が3倍に跳ね上がってるんだ。
俺に任せろ、これは投資チャンスだ」と自信満々に宣言した。
古びた黄色い本体を掲げる父の表情は、確信に満ちていた。
僕は机の上のノートを開いて、この光景を記録する。
父の投資心理は奇妙だ。
所有物を突然、金銭価値の対象へと変換する能力。
それは一種の錯覚現象に近い。
「試しに起動してみましょう」と、画面が映るかどうか確認することにした。
ボタンを押す。
画面は反応しない。
何度押しても黒いままだ。
「画面が映りませんね」と父に伝えると、父は即座に言い訳を組み立てる。
「古いだけだ。
修理に出せばすぐに売れるようになる。
値段はそのまま付く」
母がテーブルから視線を上げた。
その瞬間、僕は何かが始まることを予感した。
「修理代を考えたら、赤字です」と母が冷徹に指摘する。
「いや、修理代は安いもんだ。
通販で部品も安く手に入る」と父は次々と言い訳を放つ。
しかし母の沈黙は、既に結論を示していた。
20時15分、父は結局ゲームボーイカラーをフリマアプリに「ジャンク品」として出品することに決めた。
段ボール箱に包まれた本体を、配送準備の棚に置く。
その直後、黒森モザイクが箱の上に飛び乗り、昼寝を始めた。
父は発送ボタンを押すことができない。
ペットが梱包物の上で眠っているという現実が、どう言い訳すればいいのか分からないのだ。
僕はこの光景を、ノートに正確に記録した。
父の投資心理は時間とともに変化する。
その変化を追い続ける必要がある。
明日になれば、モザイクは別の場所で眠っているだろう。
その時、父はどのような決断を下すのか。

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