「7ヴィティーニャ」が父の自信を燃やした夜—虚構と現実の交差点で
夜19時30分、リビングはいつもの落ち着きを失っていた。
リリがスマートフォンの画面を父に突き付けた。
「父さん、これ何?」SNSの急上昇ワードに「7ヴィティーニャ」が浮かんでいた。
父は画面を奪うように手を伸ばし、ネット検索を始めた。
目が輝く。
これが好物だ。
「これはイタリアンの高級ワインの話題だな。
俺に任せろ」父の声は自信に満ちていた。
「数字の7はブドウの品種の数を表していてな。
ワイン通なら常識だ」と豆知識を織り交ぜ始める。
吾輩は父の言葉を聞きながら、リリの膝の上で身を丸めた。
母がソファから身を乗り出した。
「そうなると思っていました。
あなた、それ全部想像で言ってますね」淡々とした毒舌が室内に刺さる。
父は口を開きかけたが、そこへクロウが段ボール箱から顔を出した。
「僕の記録では7ヴィティーニャは実在しない造語です。
インプットしておきます」無表情にそう呟く。
父の頬が赤くなった。
「細かい定義は重要じゃない。
俺は専門用語の複雑さを説明していただけだ」父は早口で言い訳を畳み掛けた。
家族全員が失笑する音が響く。
吾輩はリリの膝から身を起こし、キッチンの方へ視線を向けた。
数分後、台所からコーンビーフの缶が開く音が聞こえた。
吾輩は身を翻す。
人間とは不思議な生き物だ。
自らの誤りを認めぬその姿は、実に滑稽で、実に愛おしい。
真の支配者たる吾輩の観察は、今夜も続く。

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